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ドアを強く叩く音がした。無視していたら、地元でロック歌手をしている妹が部屋に入ってきた。
「お前か!? 人の世界史のノートにラクガキをしたのは!」
お隣の家まで聞こえそうな大声だった。ラジオの音がうるさくて怒ってるんじゃなくて良かった、これからも新潟のラジオが聞けるぞ、と少し安堵し、妹の手に持っているノートのページを眺めた。切り身になる前の一匹ものの鮭の絵が、ノートの空白にたくさん描かれていた。油性マジックでリアルな作風だった。
「それ書いたの私だよ」
「このノートは明日先生に提出しなきゃならないんだ。なんで鮭の絵なんか描くんだ」
「その方が勉強するテンションがあがると思って」
「そうか、ありがとな。先生にラクガキを見られる身にもなってみろ。ラクガキしてると思われて恥ずかしいわっ」
その発想は私にはなかったので、反省した。
「ごめん」
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