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お天気のよい、太陽の光が窓から沢山入ってきている部屋のテーブルに、いろいろなフルーツがのっている、きれいなケーキがテーブルに置いてあります。
ケーキはママのお友達からの、おみやげです。
ママは、自分とお友達に紅茶を入れました。ナナには、いつもナナの使っているプラスチックのコップにジュースを入れてくれました。飲み物を入れながら、お友達にしゃべりかけている時のママの笑顔ったら、とてもうれしそう。
ママはお友達が来た事がうれしかった。ナナはきれいで美味しいケーキがうれしかった。そしてナナは、うれしそうなママの笑顔が嬉しかった。
ママのお友達は帰る時に、お花の入った小さな袋を
「ケーキを買ったお店でもらったの。」
と言ってママに渡しました。
お友達が帰ってから、ママはお花の種の入った小さな袋を両手に大事に持ちながら
「ママと一緒にお花を育てようか。」
とナナに言いました。ナナは、お花を育てた事がありません。「お花を育てる」という事が、ナナには、あまりよく分からなかったけれど、「ママと一緒に」と言われたから大丈夫な気持ちがしたので
「うん。」
と、ナナは頷いて答えました。
ナナが、パパとママと住んでいるお家にはお庭がありません。だから、ママはベランダに小さな小さな花だんを三つ作りました。そしてママは言いました。
「毎日、お水をあげるのよ。そうすると、土の中から芽が出てくるの。」
ナナとママは、その日から毎朝、花だんの中の土にジョウロでお水をかけました。すぐに芽は出てきません。
そんな、ある日、今までと同じように同じ時間に花だんの中の土に、お水をかけようとしたら、おどろいた事がおきました。
二羽の鳥が一番はしっこの花だんとベランダのかべの間に巣を作り始めていたのです。二羽の鳥はかわるがわるにクチバシに小枝をくわえて飛んできてはセッセと巣を作っています。
バサバサと鳥が羽を動かしながらベランダにいるようすが、ナナには少し怖くてママの洋服をつかんでママにしがみつきました。
ママは怖がることなく鳥が巣を作るのを見ながら
「ポッポッポ」
と、やさしく言いました。ママはナナの頭の上に、そっと手をのせて
「鳥が怖がらないように、巣のそばに行くのは、やめようね。」
と言いました。
その日から、ナナとママは、鳥の巣から離れている方の花だんの土に、今までどうりジョウロでお水をかけました。それにしても、芽はなかなか出てきません。ナナは、だんだんと心配になってきました。
「本当に芽が出てくるのかなあ。」
巣を作っていた二羽の鳥の巣が出来上がりました。鳥は、巣の中に二個、卵を生みました。ナナは、やっぱり鳥に近づくのが怖かったけれど、ママが巣の中の卵を写真にとってナナに見せてくれました。写真には、巣の中に二個の卵が、ちゃんとありました。
ナナに写真を見せている時もママは
「ポッポッポ」
と、やわらかく歌うように言いました。
ある時、いとこのお兄ちゃんがナナの家にとまりにきていて、いとこのお兄ちゃんは朝からゲームをして遊んでいました。
いつもの、ナナとママが花だんの中の土に、お水をあげる時間だったけれど、ナナはいとこのお兄ちゃんがゲームで遊んでいるそばに座って見ていたいと思いました。ゲームのそばを離れたくありません。
ママは、いつもと同じようにベランダに出てジョウロとスコップを持って花だんの手入れの準備をしています。ママはベランダの外へ出る時
「ポッポッポ」
と、また歌いながら窓を開けてサンダルをはいて居ました。
二羽の鳥がナナのお家のベランダに飛んできてから巣を作り始めて卵を生んだのに、ナナがママと二人で毎日毎日、同じ時間にジョウロでお水をあげている花だんの中の土には、なにも変わる事がないのです。
「ポッポッポ」
と歌いながら花だんの中の土を、のぞきこんでいるママ。
ナナはゲームをしているお兄ちゃんのそばを離れて、ベランダの窓を開けてサンダルをはいて出ました。ママと一緒に花だんの中の土に、いつもと同じようにジョウロでお水をあげました。
芽はまだ出てきていないけれど、ふしぎとナナは、うれしい気持ちになりました。また芽の出てくる日が楽しみな気持ちになりました。
それからしばらくした、ある日たまたま、ナナのお友達のカナちゃんが、ナナとママが花だんの中の土にお水をあげる時間に遊びに来ました。カナちゃんは
「ナナちゃんの家のベランダで鳥が卵を生んだの?私のお母さんが言ってたよ。」
と言いました。ナナは
「うん。」
と答えました。カナちゃんは
「私も見たい。見てもいい?」
と言いました。ナナのママは、カナちゃんをお家に入れてベランダの方へ一緒に連れて行きました。
ベランダの窓を開けたところから、鳥が巣に居るのを見てカナちゃんは
「わあ。」
と、おどろいて、うれしそうでした。二個の卵は、ひな鳥にかえっていたのです。カナちゃんは、すぐにそばへ行こうとしたけれど、ナナのママは
「鳥をびっくりさせないように、そっと離れたところから見ていてあげようね。」
とカナちゃんに言いました。それからナナのママは花だんを指さしながら
「ナナちゃんと、おばさんね、お花の芽が出るように毎日まあいにち、お水をあげているの。」
とカナちゃんに言いました。だけどナナはちょっと怒って
「でも芽なんて出てこないもん。毎日毎日お水をあげたけど全然出てこないもん。」
と言いました。ママは花だんの中の土を見ながら
「出てくるよ。」
と歌うように言いました。
カナちゃんは、ナナとママが話しているのを見ていてから
「私も一緒にお水をあげる。」
とナナに言いました。今日はナナと、カナちゃんと、ママとの三人で少しずつジョウロで花だんにお水をあげました。
ナナはお水をあげてから
「本当に芽なんて出てくるのかなあ。」
お水をかけた土を見ながら言いました。それからカナちゃんとお外へ遊びに行きました。
何日かした、ある日の朝、ナナがいつも目をさます時間に起きたら、ママは静かにベランダの外を、閉めた窓の中から見ていました。
「ママ」
とナナが呼んだら、ママは人さし指を口にあててシーッと言ってから、ナナを手まねきしました。ナナがママのそばに行くと、ママはナナを抱っこして、窓の外を指さして見せました。
ひな鳥だった二羽が、りっぱな大人の鳥になって、ベランダの柵の上で、飛び立つ準備にバタバタと羽を大きく広げたりとじたりしています。大人の鳥になって見えるけど、やっぱり飛ぶ事は初めてなので、飛び立つのに勇気を出そうとしているみたいです。
そして、まず一羽の鳥が勇気を出して柵から飛び立つと、次にもう一羽の鳥も、その後をおっかけるように飛び立って行きました。初めてベランダに来た時クチバシに小枝をくわえて来て巣を作り卵を生んで育てたお父さん鳥とお母さん鳥も飛び立って行きました。
ママは、ナナを抱っこしたまま、そのようすを見ていました。ナナは、ちょっとさびしい気持ちになって、抱っこしてくれているママの顔を見て
「飛んで行っちゃったね。」
と言いました。ママは、ナナの顔を見るとニッコリ笑って、うなづきました。そしてママは鳥が飛んで行ってしまった後の朝の空を見ながら、ナナを抱っこしている体を揺りかごのようにゆっくりと揺らしました。
ナナを抱っこからおろすとベランダの窓を開けて、今までは近寄ってなかった鳥の巣のところへ行きました。ママは、ホウキとかチリトリとか、いらなくなった新聞紙を使って、鳥がいなくなった後の巣を片づけました。巣のまわりは、とても汚れていたけれど、ママはいつものお家のお掃除をするのと同じように歌を唄いながらしていました。
さあ、今日も花だんの土にジョウロでお水をあげる時間です。ナナは、いつもお水をあげている花だんをのぞきこみました。
すると、おどろいた事がおきていました。ナナはうれしさいっぱいで大きな声でママを呼びました。
「ママ!ママ!芽が出てきたよ!芽が出てきた!」
(おわり)
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