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良く分からない、コントみたいな事情で お店に招かれてしまった。 お店の洗面台を貸してもらって顔を洗ったわたしはカウンター席に通された。 喫茶店のお姉さんはごめんなさい、 と言いながら眉毛を曲げていた。 メニューよりもおしぼりを差し出してくれる。 「わたしが急に近づいたからだと思いますよ」 その猫は隣の席で丸まって寝てしまった。 なんてことはないんだ、このお店のペットだったわけだ。 よしよし、良いお姉さんに飼われているんだね。 わたしは猫の背中を撫でてあげた。 喫茶店の中を一通り見回してみる。 白い壁と木目調の床、テーブルやカウンター席はガラスの板が貼られている。 上品で美しい室内だった。 部屋の隅には小さいながらもピアノが置かれているのです。 落ち着くような、とても素敵な空間でした。 お姉さんはわたしの前に立ち、 腰の前に手を置いて軽くお辞儀をしました。 「<カフェ・セプトクルール>へようこそ。 カラフルな場所にしようと思い、 <虹の七色>を示すフランス語の名前にしています」 わたしも倣って頭を下げておいた。 「店内は静かなデザインですが、 皆さまにくつろいで頂くためです」 白いブラウスと黒いパンツに 群青色のエプロン姿が清潔そうで、 立派な店員さんという印象でした。 彼女はアイスティーとチーズケーキを置いてくれる。 「私の猫、華 -ハナ- がご迷惑をおかけしました。 当店のおごりにさせて頂きますので、 どうぞお召し上がりください」 わたしはうつむいてしまった。 ここまでサービスされてしまって、 なんだか恐縮してしまう……。 けれども、断るのもいけないよね。  ・・・
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