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(僕side) 僕は学校の帰り道に、信号が変わるのを待っていた。 4月になって、温かい陽に祝福されるように新しい生活が始まっていた。 僕たちは高校生になったのだ。 信号機がなかなか変わらないので、 ふと公園の方に目を向けてみた。 公園ではある少女がしゃがみ込んでいるのが目についた。 それは<春>の少女だった。  ・・・ 興味をそそられた僕は、自転車を降りて彼女の方に静かに近づいていった。 彼女は同じ高校の制服 -黒のブレザーと細かいチェックがある 青いスカート- を 着て公園の片隅でしゃがみ込んでいる。 なにをしているんだろう……。 彼女は俯きながら白い花を撫でていたのだった。 うっすらと声が聞こえる。 「……かわいそうだね」 その声を聞いた僕は、 カメラのピントが合ったように くっきりと少女の姿を捉えたんだ。 まるで、周りの草木がすべて風景となって 少女が被写体と思わせるような……。 そんな錯覚を覚えてしまった。 彼女の憂いを帯びている感じに、 なぜか見とれてしまった。 どうして? ……とても綺麗な光景だと思ったんだ。 僕は、物音を立てないように彼女と白い花のツーショットをファインダーに捉えた。 ・・・
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