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花を撫でていた少女はこちらを振り返った。 僕が写真を撮っているのに気づいた素振りは見せず、僕の前に立った。 並んで立つと、彼女が少し背が低いのが分かった。 ライトグレーのキャスケットの下には、 茶色を思わせるショートカットの髪、 小さい目と鼻があった。 彼女が喋りかけてくる。 「ええっと、キミは確か同じクラスの……」 残念なことに、僕の方は彼女のことをあまり認識できていなかった。 そうだっけという言葉しか出てこなかった。 顔を見たことがないから、 別の中学生の生徒だろうか。 まあ、今日は入学式だけしか行っていないから当然といえば当然なのだけど。 それでも、彼女が僕のことを同じクラスだと覚えていてくれて嬉しかった。 彼女は腕を伸ばして、小さな手のひらをこちらへ向けた。 「あのう、せめて握手しよう?」 僕は彼女の手を軽く握り返す。 手を離した後に、後ろで手を組んだ彼女は 語りだした。 「私ね、歩いてたら白いツツジを見つけたの。 でも、踏まれて潰されちゃってて……」 可哀想に思ったのだと言う。 とても優しい感性を持っている少女だった。 ・・・
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