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「花って綺麗だよね。 なんだか彩りが増すような感じがして、 わたしは好きだなあ」 君はどう思う? こんな風に尋ねられた僕は分かるよ、 と共感してみせた。 「やっぱりそうだよね」 彼女は少しほほ笑んだ。 その表情はまるで、まだあどけない中学生のようにも見える。 僕は手にしていたカメラを見せながら会話を引き継いだ。 「今の時期は色んな花が咲いてるよね。 写真の題材になると思うんだ」 彼女はきょとんとした表情を見せてしまった。 「写真は撮ったことがないなあ……」 でも、カラフルになるから写真の撮りがいがあるかもね、と話の歩調を合わせてくれる。 「わたしは花っていうと、花壇よりも地面で咲いているのが好きだなあ。 穏やかだけど、たくましく生きているんだ」 そう語る彼女の瞳はなんだか輝いているように思った。 話していてなんだか楽しかった。 しかし、話の腰が折れたのはそれからだった。 ……なんて呼べば良いのだろうか 僕たちは自己紹介してお互いに帰ることにした。 わたしの名前にも<春>が入っているんだよ、彼女はそう教えてくれた。 だから、彼女の好きな季節なのだろう。 彼女は春音-はるね- という名前だった。 ・・・
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