前編

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 *****  お茶入りましたよ。  そんなに美味しいですか? ありがとうございます。  いや、昔、お屋敷の女中をしておりまして、そこで厳しく教え込まれたものですから。  ええ、津川(つがわ)のお屋敷です。今は廃屋で幽霊屋敷とか呼ばれていますね。  私は十五の年にそちらの小さい坊ちゃまの子守りとして女中に入ったのです。  ちょうど津川の奥様が亡くなって、六歳の坊ちゃまの子守りが必要になったのです。子守を新たに付けるにはちょっと大きなお年でしたけれど、生まれた時から弱くて病気ばかりしている坊ちゃまでしたから。
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