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さて、庭の真ん中に作られた池の所には大きな岩がありまして、そのすぐ傍に水仙の花が一輪だけ咲いており、花の上には烏揚羽が一羽留まっているのが見えました。
あの水仙は植えたものかしら、それとも自然に生えたものかしら。
そんなことを思いながら歩いていくと、ふとその鮮やかに黄色い花か、黒地に碧い光を秘めた蝶かのあわいに、すっと雪のように白い、細く長い指をした、縦長に揃った爪は紅水晶じみた滑らかな薄紅の手が伸びました。
「あ……」
思わず声を上げた私の目の前をさっと羽を陽射しに緑色に光らせて蝶は横切って行きました。
「ちょうちょが逃げちゃった」
おっとりした、いとけない声で話すその人が自分と同じ人間だとにわかには信じられませんでした。
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