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「あれは光の加減で色が違って見えるんだね」
絹めいた滑らかな光を放つ真っ直ぐな黒い髪も、日陰の雪のように蒼白く小さな顔も、黒玉じみた大きく円らな瞳も、鮮やかな弓なりの眉も、全てが常の人とは別な物で出来ているように見えました。
いや、そんな人がいる訳はないとは十五の小娘の頭でも分かりますけれど、その時の私は見蕩れるというより、むしろ、恐ろしい化け物にでも出会したようにただ目を見張るしかなかったのです。
「お客様?」
つと、目の前に立つ相手が黒髪の頭を傾げて澄んだ声で訊ねました。
初夏の陽射しを受けた前髪も、その下の大きな瞳も眩いほど輝いていて、こちらの方が遥かに体も大きいのに何故か見下ろされているように感じます。
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