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後は探し出すのみ。自宅周辺のカメラを使うことは簡単だが、映らない場所にいる可能性も大いにある。そこで、鏡矢は捜索隊を派遣することにした。
「どうしようかな〜。はるちゃんは……、こういうのはちょっと……」
何か仕事で頼ろうとするとき、真っ先に思い浮かぶ人物は葛葉遥だった。頼みやすい相手なのだが、難点が多すぎる。
「相手は爆弾魔なわけだし、突っ走って怪我されても困るけど、何より顔を識別出来るかが怪しいからなぁ」
人の顔と名前が一発で一致したところなど、長い付き合いになりつつある鏡矢でも見たことがなかった。どう考えても人探しには不向きだ。
「『姐さん』は仕事中だろうし、となると残りは……」
色んな人の名前を確認していくが、平日の昼間に時間が空いている大人の方が少ない。1人だけ、適任者を見つけるが、鏡矢は何故かとても嫌そうな顔をする。
「アイツしか、いないもんなぁ」
1度大きく溜息を吐くが、頼れない相手ではないのだと切り替える。その名前をタップすると、数コールで爽やかな声が聞こえた。
「もしもし? 鏡矢さんですか?」
「ん、伊織。今いい?」
相手は、声を聞く限りは欠点の見当たらない好青年だ。しかし、名前を呼ばれた六条伊織は、とても嬉しそうに応える。
「ええ、もちろんですとも。何か困りごとですか? それとも、お仕事ですか? 貴方の頼みでしたら、いくらでも時間を」
「うん、わかったありがとう。手短にするから、さっさと話聞いてくれる?」
「どうぞどうぞ」
……これが、鏡矢の眉間の皺が深くなった理由だ。伊織は気に入った相手のこととなると、途端に口数が多くなる。それが玉に瑕なのだ。
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