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胡桃を愛おしそうに眺める伊織は、もう和やかなムードに戻ってしまいそうだった。何となく察した鏡矢は、もういいやとぶった斬る。
「……まあ、わかったわ。一旦切るけど、犯人見つけてもいきなり地獄に落とすようなことしちゃダメだからね?」
突然の忠告に、伊織は少し間を空けて落胆した声を聴かせた。
「おや、物騒なことを言いますね。僕がそんなことをするとでも?」
「よく言うよ。いっつもギリギリなことしてるクセに」
「ふふふ、そんなことないですよ。僕はどちらかというと、準備してジワジワと追い詰める方が好みです。少なくとも、いきなり襲うなんてことはしませんよ?」
それはそれでどうかと思う。呆れた声色を出す口の端が上がっている様子を想像し、鏡矢はため息を吐く。
「ったく。お前に追い詰められた相手、毎回死にそうになってんの、わかってる?」
「そうですか? まあ、もしそう見えているなら、ただの事故ですよ」
「事故って言えば何でもアリなら、スティンクと変わんねぇからな」
「おっと、それは心外ですね」
本当に落胆した声を出すが、相手が鏡矢だからこそ、からかいだと割り切る。雑談と準備を済ませ、本編に戻ることにした。
「……では、後ほどご連絡します」
「ん、頼りにしてるよ」
「ありがとうございます。貴方の期待に応えるためにも、粉骨砕身の覚悟で」
プツッ、という音で強制終了させた。アレを最後まで聞いていたらキリがないとの判断だ。1度深く椅子に腰掛け、緩くなってしまった緊張を外に出す。
目を瞑り、再び息を整え、机に向かった。
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