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少し古いパソコンは、合言葉も聞かずにその全貌を開示したらしい。伊織が無防備なソレにUSBを挿し込めば、鏡矢の目の前の画面には、まだ知らない情報が溢れた。
「……今時パスワードも無しで入り込めちゃうと、ウイルスとか疑いたくなるんだけど」
「どうやら、あまりパソコンの扱いに慣れていない方のようですね。画面がほぼ初期設定のままです」
「はえ……。ついでにセキュリティとか色々弄ってあげようかな?」
「おや、親切な方にハッキングしていただいて、この方はラッキーですね」
伊織が嵌めたのは、パソコンを遠隔操作出来る装置だ。遠くにいる鏡矢の意のままにどんどんページが開かれる。すると、同じ画面を見ていた伊織は、その場にいない家主にそっと忠告した。
「……本当に。検索の履歴は、消しておくものですよ?」
ここ最近の履歴は、爆破事件のニュースで埋められていた。他のものに目もくれない様子は、並ぶ文字列で一目瞭然だ。
「普通は消さないだろうけどね。こんだけ話題にならなかった記事を見てると、まあ気になってるんだろうなってなるわな」
「気になりますよねぇ。目立つことをした後、世間がどんな反応をするかは」
「そんで、同期してあったメールは、こんな感じっと」
呑気に話していたはずが、鏡矢は既に怪しげなやり取りをしている文通に辿り着いていた。
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