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盗み見た謎の相手とのやり取りは、速読で拾える単語だけでも、その危険度が垣間見える。
「爆弾の買い取りを勧誘するメールが来てるし、練習のために一回爆破したって書いてある。多分、これが例の廃墟爆破のことだね」
「なるほど……。被害者を出さずに練習とは、中々の腰抜けなのかもしれませんね」
抜粋した説明から導き出された伊織の、少し考えが偏っている言い回しに、鏡矢はため息と一緒に呆れた。
「腰抜けって……」
「向いてないと言った方が、正しかったですかね。猟奇的な爆弾魔ならば、たとえ実験でも被害者が出ようと関係ない……。そんな風に考えても、不思議ではないでしょう?」
「まあ……そうね。その辺、目的を探れば分かるかもしれないけど……」
元々テンションの高い2人でもないため、機械音も受話器が拾うほど声を潜めている。……だが、静かな音もそこまでだった。
「はぁっ!?」
「ッ……。鏡矢さん……貴方の声に襲われるというのは中々刺激的な体験ですが、出来ることなら予告してもらえると助かります……」
「あ、ごめん。言ってることは意味わからんけど」
伊織ですら思わずイヤホンを投げそうになる声量の驚き。こんなときでも相手を傷つけない言い回しはさすがだが、少し方向がおかしくなっている。
「それで……どうしたんです?急に大声を出して」
「あ、そうだ! 伊織、すぐに田沼沙織を見つけないとマズい!」
「と、言うと?」
慌てる鏡矢に対し、伊織はパソコンを見つめながらながら冷静だ。しかし鏡矢は、落ち着くことなく危険を報せた。
「ここ、下の部分! 最後のメールに、次の爆破について書かれてんだろ!?」
「次……ですか。これが本命ですかね?」
「多分な。しかも、時間は今日の18時。もう1時間もないじゃんか……!」
「それはそれは……」
さすがに、タイムリミットが短過ぎる。少し気のない返事が気になる伊織を他所に、鏡矢は頭をフル回転させていた。
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