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家を突き止めても、爆破するつもりの場所も、犯人の居場所もわからなければ手詰まりだ。どうしたものかと考えていると……ふと、伊織が話を逸らすことを宣言した。
「おや……失礼?」
「何だこの時間ないときにくだらないこと言ったら切るぞ」
「胡桃くんからの電話です。彼がくだらないことで電話すると思いますか?」
「……出ていいよ」
伊織にやんわりと牽制され、少し物言いがキツくなっていることを反省する。気が立っているとはいえ、言っていいことと悪いことくらい、判別がつかないわけじゃない。
椅子に深く座り直して酸素を取り込んでいると、スピーカーからはあまり聴いたことのない間抜けな声が流れた。
「……えぇ?」
「ん……?」
「えーっと、その……、それは……事実ですか……?」
いつもの胡散臭……、……いや、清涼な雰囲気を失い、明らかに戸惑いを表に出している。
「いえ、決して貴方を疑っているというわけではないのですが……ええ。貴方のその類稀な記憶力と、強運が引き寄せたというのであれば納得する以外に道はありません。はい、そんな気がしてきました」
自分の思考を無理矢理整理しているような文章が並べられ、さすがに鏡矢も割って入る。
「何……どうしたの?」
「……胡桃くんが、犯人と接触したそうです」
「……へ??」
あまりに都合の良い報告に、鏡矢の思考は停止した。
「えーっと? あー、そっか。俺、主人公がすっごいタイミングで犯人とかち合う系のミステリーアニメ観てるんだっけ??」
「残念ながら現実ですね……。いや、この場合は幸いと言うべきですか? 僕のお願い通りに、発信機まで……」
すぐに鏡矢のパソコンに送られたのは、発信機の現在の位置情報だった。動いているし、正常に作動しているのがわかる。
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