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一方、仕事を終えて置き去りになった胡桃。ぼーっとしているのだろうなという予想を立てていた鏡矢に、ふと声をかけた。
「……ねぇ、キョウ、イオ」
「ん?」
「はい、何ですか?」
「Jackって……ペンギンの名前?」
「「……へ?」」
突然の発言に、2人は再び思考停止した。しかし、立ち止まってはいられないと挽回し、手を休めずに聞き返す。
「どうして今それを?」
「ん? えっとね、サオが落とした紙に、書いてあったの。名前かなって」
「竿?」
もう思考を2つに分けるのが限界なのか、鏡矢は頓珍漢な返しをする。だが、伊織だけは、鏡矢が読み解けなかった単語の意味を理解した。
「……! もしかして、田沼沙織のことですか?」
「うん」
誰の名前も省略してしまうのは、胡桃の癖だ。美点か欠点かと聞かれれば、この場に限っては後者だろう。
「くるみんそういうことは先に言って!!」
「……? ごめんね?」
ものすごく重要な情報の匂いに、鏡矢は反応せざるを得なかった。深刻さをわかっていないのは、当の本人だけだ。
「Jack……何かの暗号でしょうか。確かに、動物の名前と言われればそれまでのような気はしますが……」
「そう……だな。でも、何かのヒントかもしれない」
これだけの糸口では、まだ手繰り寄せることができない。頭を悩ませる鏡矢と伊織は、核心に迫るために唯一の手掛かりを掘っていった。
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