前編

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 手元を休憩させずに情報を待つ鏡矢に、彩果はさらりと機密事項ではないかと思う内容を送信した。 「爆発物についての情報よ。被害状況から、爆薬の量がかなりの物だったと予想されてるし、外枠を集めて調べてみたの」  彩果の『相棒』は、爆弾そのものだ。飛散した欠片を繋ぎ合わせるなど至難の業だが、無数の『相棒』と培った経験値で、不思議な力とはまた別の技術を身に着けている。その能力を買われ、彼女は警察の捜査に協力しているのだ。 「バラバラになったものを集めるって、相変わらず爆弾の修理に関してはピカイチだね。それで?」 「……足りないのよ」 「足りないって……何が?」 「起爆装置。発火させる物が見当たらないから、犯人が直接やったとしか思えない」 「けど、そんなことしたら、規模的に犯人が死ぬ。だから」 「『相棒』を使って、時限爆弾になり得る想像(イメージ)を作り上げたのだと思う」 「もしそうなら、犯人は『相棒』の力を犯罪に使った、スティンクということになる。……そういうことだね」  2人で1つの文章を作り上げ、真相に手を伸ばす。それが終わると、彩果はふ……と、詰めていた息の温度を常温にした。 「話が早くて助かるわ。私が予想している犯人の『相棒』は、花火か何かじゃないかと思ってるの」 「あー、なるほど? 確かに、それなら燃えてなくなるもんね」 「ええ。ただ、廃墟の電球の破片がやけに散らばってたのが……気になるんだけど」  懸念を口にする彩果の膨らむ不安を感じ取り、マウスを動かす手を止めた。加速しないように、なるべく配慮して話す。 「もし、犯人の『相棒』がそういうのなら、破片とかが混じっちゃってるかもってこと?」 「可能性は捨てきれないわ」 「そっか。……とにかく、怪しいヤツのリストから、その方向のを『相棒』にしてるヤツ探してみる」 「よろしく。……なんだか、嫌な予感がするのよ。これが、ただの始まりじゃなきゃ良いけど……って」 「……だね」  鏡矢は比較的落ち着いているように聞こえるが、キーボードに伝わる力は3割ほど強くなっていた。
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