男の子のくだらないところ三十三

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男の子のくだらないところ三十三

 テストが終わったらやっぱり気は抜ける。やりたいことを見つけなくちゃならないけど、今日は隼人の家に集まってマンガを読みながらダラダラするのだ。それもまた最高の時間。  みんなで思い思いに隼人の部屋にあるマンガをじっくり読む。飲むものは麦茶。十分ありがたい。 「結さぁ、医者なんかいいんじゃない?」  直人が医師が主人公のマンガを読みながらそう呟いた。 「いや医学とか全然興味ないんだけど?」 「ならスポーツ選手は? これから頑張れば何とかなる!」 「いや。それもない」  大陸の提案も早速却下する。 「漫画家とか?」 「あ、それはちょっと楽しそう……」  隼人の提案にノッてみたら直人が不機嫌になる。 「なら俺の小説の表紙早く描いてよーー」 「いやまだそこまで画力は……」  直人がこのメンバーのイラストを小説の表紙にすると言い出してから結構経つがその思惑はまだ叶っていない。画力もまだ人様に見せるほどじゃないと思っちゃうと遠慮しちゃうんだよね。 「料理人もいいかもねぇ」   直人をスルーして、大陸がそう言う。 「それもいいかもなぁ」 「結のお母さんに鍛えられているなら、凝った料理もいけそうだしなぁ」 「お母さんはただの主婦だけどね」  マンガを読みながら、みんなが私の将来やりたくなりそうなものの意見を出してくれるが、その中、直人がヘソを曲げる。 「小説の表紙は? 大陸でも隼人でもいいからさぁ」  直人は余程イラストでの表紙が欲しいらしい。 「まぁまだ画力があれだからさ……」  隼人が何とか取り繕うが、みんなマンガ読みながらの会話だ。器用なことだ。テストが終わってちょっと気が緩んでいるのもあるのだろう。 「じゃあ俺すねる!」  直人はそう宣言して、押入れに入って襖を閉めた。勝手知ったる隼人の部屋とは言え自由だな。 「小さい頃、よく押入れにこもったなぁ。あれなんで、あんな楽しかったのかな?」  隼人がマンガを読みつつ、そんな話をする。 「俺もやったなぁ。襖閉めて真っ暗にするとなんかドキドキすんだよねぇ。知らないうちに寝ちゃってたりさぁ。楽しかったなぁ」  隼人と大陸は押入れに閉じこもる話をして、押入れに閉じこもった直人を完全にスルーしている。  仕方ないので私が押入れを開けてみる。 「直人、機嫌直しなよーー?」 「いや。大丈夫だけど、押入れに閉じこもるってやっぱり楽しいなぁ」  だと思ったよ。そうでなきゃ押入れに閉じこもろうとか思わないよな。  直人はのそのそと押入れから出てくる。
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