男の子のくだらないところ一

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 直人は落選したからといって大した言い訳はしない。夢を追っているのは直人だけではない。大陸はバスケを頑張っているし隼人は直人と大陸のサポートにその青春を捧げている。  青春なんてアイスみたいなもので、早くに口にしないと跡形もなく溶けてしまう。そんな青春真っ盛りの男の子に混じる私は逆にこれといった夢がない。この先も三人を応援し続けることが私の青春なのだろうか?  高校一年生の冬。高校生になれば夢が開くなんて思っていたのに中学生時代と大して変わらずにもうすぐ二年生になる。  散々に落ち込んだ直人を連れて私達は喫茶店をあとにする。すでに夜で空にはオリオン座がキラキラと輝いている。  直人も大陸も隼人もキラキラ光るお星様みたい。  前を歩く三人の背中を眺めながら私はそんなことを考えていた。  三人に家まで送ってもらい、お風呂に入ったあとスマホを確認すると四人だけのグループラインに直人のコメントがある。 『みんな、ごめんな。ありがとう』  これもまたいつもの流れだ。既読はつくが大陸も隼人も余計なことは言わない。それまた男の友情というやつか。  私もコメントをつける訳ではないが、いつものことだから大して気にもしなかった。  翌日、家を出て学校までの道すがら大陸と会い、隼人と会い、直人と会い、いつものように高校に向かう。くだらない話をしながら歩くのが日常だけど、今日の直人の様子は少しおかしかった。昨日の落選がかなり響いているのだろうか。  コンテストで落選する気持ちは私には分からない。分からないのに口出しなんてできないし、直人も口にしないから何を聞けばいいかも分からない。何かあるならば直人は秘密にせずに打ち明けてくれるだろう。それを待つしかない。
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