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そんな私の小さなやっかみに三人は気づくはずもなく、カツ丼をガツガツ掻きこんで、のんびりと私がカツ丼を食べ終わるのを待っている。大陸も直人も隼人もスマホをいじっている。
やっぱり昨日の入選作品を読んでいるのだろう。直人がこれからどういう作品を書けば入選できるのかを分析するためのものだ。
私がカツ丼を食べ終えて、水を口にしたら直人が小さく呟いた。
「どうすりゃいいのかな?」
それは大陸にも隼人にも私にも答えられない。この中で小説を一番上手く書けるのは間違いなく直人だ。それでも考えなきゃならない。
「やっぱり、直人はヒューマンドラマばかり書くじゃないか。たまには違うジャンルに挑戦してみたらどうだ? 視線を変えるんだよ」
隼人の意見は確かに最もだ。
「そうかな? 得意ジャンルを突き詰めたほうがいいんじゃないね?直人のレベルが低い訳でもないんだからさ」
大陸の意見も確かに分かる。
「考え方は色々だけどさ、直人はどうしたいの?」
私の問いかけに直人は頭を抱える。
「分からないんだ……」
直人の落ち込みようは激しく、そのせいか今日は何となく調子が狂う。ニ年間の落選か。私も直人に付き合って小説投稿サイトにアカウントがあり、幾ばくかの交流はある。そこにいる人は何十年も書き続けている人が当たり前にいて、そういった人たちも当たり前に落選していて、コンテストの結果発表には悲喜こもごも。それはもう色んな人間模様がある。自信作でも落選し、まさか自分が入選するとは……と驚く人もいる。長く続けているから技量があるという訳でもなく、若いから技術がないということもない。
ただ私が見て感じるのは、どれだけ熱量を保てるかということが重要だということだ。そんなことは直人とて分かっているだろう。
「落ち込んでも仕方ないからカラオケでも行こーぜー」
大陸のポジティブさはありがたくもあるが、ときに無神経にもなる。大陸がグイグイと押して結局カラオケに行くことになったが、テンションが高いのは大陸だけだ。直人はスマホを手に何かを打ち込んでいる。多分、小説を書いているのだろう。直人だけが歌わずに私たちはカラオケ三時間を満喫した。満喫というには空気はやはり重かったが。
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