男の子のくだらないところ二十六

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男の子のくだらないところ二十六

 両親たちが温泉旅行から帰ってきて私たちが真っ先にしたことはカラオケに行くことだった。だってさ夏の外は暑いし、喫茶店はやはり長居しづらいし、運動は大陸の一人勝ちだし、せっかくのお出掛け解禁なのに引きこもりたくもない。という訳でお出掛けできて室内で涼しくて長居できてあまりお金がかからないものを選んだらカラオケになったのだ。  カラオケにはドリンクバーもあるし、みんな高得点が取れる訳ではないが、そこそこに歌が好きだから多分ベストな選択だ。 「この前さぁ、おじさんが今の若い子は歌が上手いよねぇって言っててさ」  直人が熱唱している中、大陸がそんなことを呟く。 「先入観だよな。若いから何が上手いとか、年取ってるから経験豊富とか」 「そうそう! みんながみんな上手い訳じゃないし!」  直人の熱唱をよそに大陸と隼人は白熱している。直人の歌を聞いてやれよ。まぁ直人は目瞑りながら入り切ってるから別にいいのか。  直人の番が終わり、次は隼人だ。隼人がいるとカラオケは毎回採点付きだ。このメンバーで九十点を超すのは年に数回しかないが、採点もあればあるで楽しい。だが途中で強制終了の可能性があるコンテンツは直人が嫌がるからやることはない。 「若いから、年食ってるから、そういうのは偏見でしかないよな」  直人も歌いながらしっかりと聞いていたらしい。 「そーそー! あと男だから、女だからもそう!」  この三人が愚痴を言うのはあまりないが、理不尽に対してはそれなりに怒りがあるようだ。まぁ分からないでもない。こいつらは確かに優しいけど、誰にでも優しいし、男女の分け隔てもない。それを優柔不断ととるか社交的ととるかは、見る目によって変わるだろう。  上手くバランス取りながら生きているようなこいつらでもそれなりに悩むのだろう。 「この前なんか、スマホ持ってるのに腕時計なんかしてるの? なんて言われてさ!」  大陸も直人も隼人もお揃いの腕時計をつけている。確かにスマホがあれば必要ないかも知れないが、私はそんなことは言えない。 「それは腹立つな!」  直人も大陸に同調する。その中、隼人の歌も終わり隼人も混じってくる。 「他の奴から見たら変だろうけど、俺らには大事なものなのにな!」 「あんたたち、その腕時計、大切にしてるよね?」  私は、お揃いの腕時計をちょっとは気にしていたので、いいタイミングだと判断して聞いてみることにした。 「壊れたりしてないの?」
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