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男の子のくだらないところ二十八
本日晴天。テストも間近。そんな私たちがやることは公園でスマホを眺めること。今日に関しては、それが何より大事だ。なんてたって直人と隼人が作品を出してる短編小説のコンテストの結果発表の日だから。隼人も優秀作品に選出されてからは選出されていない。今日までに三回は結果発表があったが二人とも泣かず飛ばすだ。隼人が優秀作品を取った日、直人が泣いたことを忘れていない。隼人にも頑張ってほしいが、直人にだって頑張ってほしい。そんな気持ちで今日もスマホを眺める。
結果発表は大体十七時過ぎだ。それがサイトトップに出るまで、色んな人の作品をちょこちょこ覗く。直人がフォローしている人は私たちも大体フォローしていて、感想を共有している。その中には十回以上受賞している人もいるけど、私や大陸のような読み専にも優しく接してくれている。直人や隼人の作品にも感想をくれるような人だ。ネットの上とはいえ、いい縁だと思う。
「今回は結構自信あるんだ……」
直人は自らを落ち着かせるようにそう呟いた。
「駄目でも諦めないけど、今回落ちたらショックデカいな……」
直人は独り言のように呟く。確かに隼人が優秀作品に選出されてから、直人の作品は断然に良くなった。それは隼人というライバルができたからだろう。
「隼人はどうなんだ?」
「俺は微妙かな? いいアイデア出なくてさ」
「選出されるといいな」
時刻は十七時をまわる。みんなでサイトのトップを開き直す。結果発表の文字が踊る。
数秒、確認の時間。
「直人、やった! 佳作だ佳作!」
真っ先に叫んだのは大陸だった。
「直人すげーー!」
隼人も直人に抱きつく。
「直人、おめでとう!」
私ももちろんお祝いを告げる。その中、直人はキョトンとした顔をしていた。
「受賞……」
「そうだよ! 受賞だよ! はじめての選出が佳作だよ!」
私は直人の手を握り、ブンブンと振ってみせた。
私たちは知っているんだ。直人がどれだけ努力をしたかを。どれだけ悔しい思いをしたかを。中には直人の夢を馬鹿にする人もいた。その直人がやっと認められた瞬間なのだ。
「あはは……。受賞かぁ」
あまりはしゃがない直人。大陸が直人の背中をバンバンと叩く。
「もう! もっと喜べよ!」
次の瞬間、直人が見せたのは涙だった。
「嬉しいに決まってるだろ……」
ボロボロと涙をこぼす直人。隼人ももらい泣きしている。
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