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男の子のくだらないところ二十九
プールに来た。やたら暑いから水浴びしたいのもあったが、一番の理由は大陸の鬱憤を晴らすためだ。部活を辞めたからといって大陸がトレーニングを辞めた訳ではない。もともと動くのが大好きな奴だから、朝のランニングだけだと動き足りなくて何かをプラスしたいと言うものだからプールに来た。
私の水着の話で盛り上がっちゃう? とか期待したけど、こいつらがそんな話をする訳なく、本気で泳いでる大陸の横で私と直人と隼人はボールを使って遊んでいた。
やっぱり夏場の水浴びは涼しい。悔しいことにプールや海に来て目立つのは私より男子三人だ。
「カッコよくない?」
そんな会話が聞こえてくるが、当の男子三人はそんな話に興味は皆無の奴らなんだよ。
ボール遊びに飽きたら、三人で浮き輪を使ってプカプカ浮いている。その中、大陸はまだ本気で泳いでる。
「大陸、もう二十分は泳いでるな」
ちょっと引いている直人。流石にプールにスマホは持ち込めないから小説は書けない。
隼人に至っては寝ている。水浴びは楽しいが、大陸が満足するまで泳ぐのを待つ時間は退屈だ。
そういうときは、おしゃべりに限る。
「直人、佳作とってから何か変わった?」
「ん〜。とりあえずフォロワー増えた。あとレビュー増えた」
「へぇやっぱり違うんだ。みんな頑張ってて私はそれなりに嬉しいよ」
「それなりか……。結はやりたいことないのか? そろそろ将来を考えてもいい頃だろ?」
「そうなんだよねぇ。やりたいこともなりたいものも思いつかなくてね……。どんな大学に行けばいいかも分かんないや」
「とりあえず思いついたこと、挑戦してみたら? 大陸は部活辞めるのはじめから決めてたみたいだけど、隼人の小説は完全に思い付きだからな?」
「うんうん。直人はずっと小説続けてきたもんな。みんな偉いよ。挑戦かぁ。とりあえず泳いでみるか」
私は私の浮き輪を直人に預けて大陸のように泳ぎだす。
実際動くの嫌いじゃない。運動が得意であることと好きなことは違うんだ。それを分かって泳ぐ。直人が心配して、あんなことを言ってくれたのは分かっている。今の私のフラフラ状態も分かっている。
こうやって楽しい学生時代がいつか終わるのも分かっている。それでも思いつかないんだ。
女子のほうが成長早いなんて言うけれど、やりたいことをちゃんと決めてる男子はなかなか成長が早い。
そんな男子に囲まれて焦るかといったら、そうでもない。私は応援することの楽しさを知っている。将来のビジョンが決められないのに大いに関係しているだろうが、そんなのは言い訳なんだよな。
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