男の子のくだらないところ三十

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「はいはい。さっさと歩く!」  廊下で直人は大陸の背中をグイグイ押す。 「そんな急がなくても……」 「後輩待たせてんだから!」  直人に怒られて大陸は、口を尖らせた。  体育館裏には大陸一人で行き、私たちはその陰で待つ。すぐに女子の声は聞こえてくる。 「あの、私、先輩のバスケしてる姿が好きで……。でもバスケ辞めた先輩もやっぱり好きで……。諦めきれないので私と付き合ってください!」  結構な音量の告白。うん。私もバスケをしている大陸は格好いいと思うよ。それは同意だ。 「ごめんな。俺、付き合えない」  大陸は即答してみせる。どうしてそんなに即答できるんだよ? 可哀想じゃないか……。 「……先輩は、お仲間さんたちにバスケ辞めさせられたんですか? あんなに一生懸命だったのに! 先輩は騙されているんです! 好きなことを簡単に諦められるはずないじゃない!」  私の胸がキュッと詰まる。すぐに大陸の声が聞こえた。 「あいつらは俺にバスケ辞めろなんて一言も言ってない。バスケ辞めたのは俺がはじめから決めていたことだ。正直、俺の仲間のことを悪く言うやつは万に一つの可能性もない。そういうのやめてくんない?」  私は背筋が寒くなる。言うだけ言って大陸は私たちのもとへ戻ってくる。 「帰ろう」  女子は体育館裏に置き去りのまま。 「大陸……、あのままじゃ……」 「いいんだ。変にぼかすよりはっきりと言ったほうが」  大陸はサクサクと歩き、私たちはそのあとをついていく。 「あんたたちって告白受けたとき、いつもああなの?」 「大陸ほどじゃないけど濁したりはしないね。期待持たせるだけ悪いから」  直人の弁。 「でもちゃんと答えてる。スルーはしないよ」  隼人の弁。 「そうなんだ……」  ちょっとだけ胸がモヤモヤする。大陸はどう見ても怒っているし。そりゃ仲間を貶されたら怒るのは分かるけど、そこまでプリプリしなくていいんじゃ。 「結はさ、多分怖かったんじゃないか? でもさ、俺らはああいう風に答えてるんだ。怖かったらごめんな」  プリプリ怒っているのに、大陸は私に気を遣う。私は告白断るにもあんたらは、気を遣って優しく断っているのだと思っていた。少しだけショックだった。 「いいよ。私が介入できる話じゃないし」 「結は強いな」  何故そんなことを言われたのか私は首を傾げる。 「そうかな?」 「そうだよ」  大陸は黙って歩く。少しだけ怒りが収まったようだった。
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