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「はいはい。さっさと歩く!」
廊下で直人は大陸の背中をグイグイ押す。
「そんな急がなくても……」
「後輩待たせてんだから!」
直人に怒られて大陸は、口を尖らせた。
体育館裏には大陸一人で行き、私たちはその陰で待つ。すぐに女子の声は聞こえてくる。
「あの、私、先輩のバスケしてる姿が好きで……。でもバスケ辞めた先輩もやっぱり好きで……。諦めきれないので私と付き合ってください!」
結構な音量の告白。うん。私もバスケをしている大陸は格好いいと思うよ。それは同意だ。
「ごめんな。俺、付き合えない」
大陸は即答してみせる。どうしてそんなに即答できるんだよ? 可哀想じゃないか……。
「……先輩は、お仲間さんたちにバスケ辞めさせられたんですか? あんなに一生懸命だったのに! 先輩は騙されているんです! 好きなことを簡単に諦められるはずないじゃない!」
私の胸がキュッと詰まる。すぐに大陸の声が聞こえた。
「あいつらは俺にバスケ辞めろなんて一言も言ってない。バスケ辞めたのは俺がはじめから決めていたことだ。正直、俺の仲間のことを悪く言うやつは万に一つの可能性もない。そういうのやめてくんない?」
私は背筋が寒くなる。言うだけ言って大陸は私たちのもとへ戻ってくる。
「帰ろう」
女子は体育館裏に置き去りのまま。
「大陸……、あのままじゃ……」
「いいんだ。変にぼかすよりはっきりと言ったほうが」
大陸はサクサクと歩き、私たちはそのあとをついていく。
「あんたたちって告白受けたとき、いつもああなの?」
「大陸ほどじゃないけど濁したりはしないね。期待持たせるだけ悪いから」
直人の弁。
「でもちゃんと答えてる。スルーはしないよ」
隼人の弁。
「そうなんだ……」
ちょっとだけ胸がモヤモヤする。大陸はどう見ても怒っているし。そりゃ仲間を貶されたら怒るのは分かるけど、そこまでプリプリしなくていいんじゃ。
「結はさ、多分怖かったんじゃないか? でもさ、俺らはああいう風に答えてるんだ。怖かったらごめんな」
プリプリ怒っているのに、大陸は私に気を遣う。私は告白断るにもあんたらは、気を遣って優しく断っているのだと思っていた。少しだけショックだった。
「いいよ。私が介入できる話じゃないし」
「結は強いな」
何故そんなことを言われたのか私は首を傾げる。
「そうかな?」
「そうだよ」
大陸は黙って歩く。少しだけ怒りが収まったようだった。
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