175人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
舞の知っている西田しのぶは物静かで地味な女の子だった。周囲からは距離を置かれていたし、舞ともあまり親しい関係ではなかった。
小学生の時に両親が離婚してしまったらしく、それがきっかけでふさぎ込んでしまったのだと言われている。だけど当時彼女が周りから浮いていたのには、別の原因がある。
「私、霊感があるんだよ」
初めてそう言われたのはいつのことだったか。
「たまに金縛りにあったりとかするし、それに幽霊や悪魔が見えるの。実際に喋ったことだってあるんだ」
彼女がそう自称していたのはクラスでも有名だった。
思春期の子供の中には、男子でも女子でも、そういう痛々しい考えをかっこいいと思ってしまう子は珍しくもない。と、今でこそ舞も思えるのだが、当時はしのぶのことをちょっと気持ちが悪いとさえ思っていたし、他のみんなからも彼女は笑いものにされていた。
「嘘つきー」
「そんなんだから親に捨てられるんだよ」
そんな心無い言葉をぶつけていた子もいた。
彼女は目を潤ませて悔しそうに俯いていたけれど、みんなくすくす笑うだけで助けようとする子はいなかった。舞だってしのぶの話を信じていなかったし、あまり関わりたくなかったから彼女を庇おうともしなかった。
舞が認知していなかっただけで、もしかしたらしのぶに対するいじめが行われていたのかもしれない。
だけどそのしのぶが、綺麗になって再び自分の前に現れるなんて。
そんなこと夢にも思っていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!