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【昔見た夢・一】 「白と橙」
十年ほど前に見た夢の話です。
私は空と地面の境もわからないほど真っ白な空間に立っていました。
あたりには何もなく、ただ延々と白い世界が広がっています。
右を見ても左を見ても白。上も白、下を向けば自分の足がありますがそのほかは見事に白でした。
近くにも遠くにも何も存在しないので、その場所がどのぐらいの広さなのかも見当がつきませんでした。
私は出がらしのほうじ茶のような色の入院着に似た服を着ていました。
しばらく立ち止まってぼうっとしていたのですが、気づくと空中に橙色の矢印が浮かんでいました。
色の乏しいその場所ではやけにけばけばしい色に思えました。
矢印の指す方向を見ても、何もありません。
ですがとくにすることもなかったので、私は矢印の指す方向へと歩き始めました。
少し歩いて振り返ると、後ろにあったはずの矢印は消えています。
さっきまで居た場所に戻るのも難しくなりましたが、そもそもどこへ行っても景色が変わらないので、危機感はありませんでした。
回していた首を戻すと、今度は足下に、目に痛い橙色の矢印が現れました。
私はまたそれに従って歩き始めました。
そのあとはそれの繰り返しです。
矢印が現れ、歩き、振り返ると過ぎ去った矢印は消え、また近くに矢印が現れる。
それを何度か繰り返したところで唐突に目が覚めました。
どこにたどり着くこともなく、何かに襲われたわけでもありませんでした。
夢の中で普通に瞬きをしていたら本当にまぶたが上がったような感覚でした。
出来事と呼べるほどのこともない平坦で不思議な夢だったので、今でもよく覚えています。
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