昔見た夢

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【昔見た夢・三】 「明晰夢について」  夢の中で「これは夢だ」と自覚して見る夢のことを明晰夢というそうです。  中には夢だと気づくことで、見ている夢を自由に操ることのできる人もいるとかいないとか。  私も夢のなかで「ああ、これは夢だ」と思ったことがありますが、それは明晰夢とは違っていたような気がします。  そのとき、夢の中に居る私は、見ている景色を「現実」だと思い込んでいるようで、「これは夢だ」と気づいても、夢から覚めたり、夢の中の世界を自由自在に操ることはできませんでした。  感覚としては、物語の登場人物が台詞として「これは夢だ」と言っているような感じでしょうか。  物語の登場人物は物語の中が現実なわけで、その現実がとても辛いものだったとき、それを見たくないがために「これは夢だ」という言葉を使います。  現実逃避的な心情の表れとして「これは夢だ」と言うだけで、その登場人物はその物語の世界を本当に夢だと思っている訳ではありません。  物語の中の住人にとって物語の中の世界が現実であるように、夢の中の私にとっては夢の中で見ている景色や起こる出来事が現実なのだと思います。  だから夢の中の私が「これは夢だ」と考えるのは、ただの現実逃避なのかもしれません。  これは完全に私の想像なのですが、明晰夢を見ることができる人は、物語の中で「この世界は物語だ」と気づくことのできるメタ的な視点を持っている登場人物と似ているような気がします。  さらに、夢だと自覚した時点で自分の思い通りに夢を改編することができるのは、メタ的な登場人物ではなく、さらに別の、物語の作者的な視点を持っているのではないかと思いました。  明晰夢もいつか見てみたい夢のひとつです。
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