天国に行きたかった

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天国に行きたかった

天国に行きたくて 空にハシゴをかけたかった 教会に行けば ハシゴが買えると思った 神父は 告解室の向こう側で 死を望んではいけない 穏やかに 聖句を引用しながら 私をさとした でも 私は疲れてしまったのです 言い残して 教会を出た 次のクリスマスまで 私は まだ地上にいるのだろうか 苦しい おそらく 自分が想像するよりもながく 私は生きていくのだろう 背中の荷が重すぎて 足が地中にめり込むのです 天使をつかわしてください 天国へ行くための ハシゴをください 祈り方を知らないけれど いるべきはずの 神に祈った 祈りは煙のように上に昇って消えていく 昼間が永遠に続けばいい 晴天と神は似てる 休日の昼間が 永遠に続けばいい 誰もいない公園で 目的もなく 空を見つめる 天国に続くハシゴを 祖母はどうやって見つけたのだろう 病院の集中治療室では 苦しい呼吸音だけがすべてだった 祖母は どうやって天国へ行く準備をしたのだろうか 彼女は 死を拒みながら 逝ったように思う 長生きすることは 幸福だろうか 重い荷物をおろしたい この背中の荷をおろすことが 死ぬということならば 私にとって 死は「幸福」だ 生きながら この荷物を下ろすことは 許されますか 私は 幸福になれますか 質問の仕方が分からないけれど 空に向かって問いかける 自殺する勇気はないのです ただ 天国へ行くハシゴをのぼりたいのです 小さな望みだと思います 叶えてもらうことは できませんか 空も教会も 答えてはくれないので 私は缶コーヒーを買うために 自販機を探す コーヒーは現実の象徴のような気がする 明日も何食わぬ顔で働くために 今は、コーヒーが必要だ
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