本音

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本音

私にも フィクションが現実世界よりも リアルに感じることができる頃があったのだ その頃は リアルは薄っぺらなものでしか無かった 子供を産み育て 気がつくと フィクションを味わう時間も 心のゆとりも失っていて 物語は 私に現実を見せてくれなくなっていた それが悲しいかと言われると そうでもなくて 日々成長していく 子供たちへの愛おしさが 心を満たしていて それは毎日少しずつ増えていくので 心から溢れ出しこぼれ落ち 家族への細やかな気遣いという行動へと昇華する リアルが過酷な時もあり 苦悩した時もあり 順風満帆の子育てではなかったが 成人した子供たちを見つめながら 幸せを噛み締める喜びは 過去の懊悩を払拭してしまう そして その代償のように 物語は 私にとって薄っぺらくなってしまったが それはそれで良いとしよう それでも時折 大人になりたくなかった という言葉が心をよぎる 大人になりたくないと叫ぶ 思春期の少年少女達よりも 枯れてしなびてきた 私たち親世代の方が 心底 大人になんかなりたくない と思っているのではないだろうか 逃げることのできない現実世界を背負って 当たり前のように歩いている今こそ 本音は 全て投げ出して 自由になりたい 背中の羽根を毟り取られたくはなかった ではないだろうか 映画を観たあと 感極まって泣いてる愛娘を見て ふと 思い至ったのである
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