長ネギを刻む

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長ネギを刻む

手首を切り刻みたい 衝動を抱えながら まな板の上で 長ネギを刻む 夕暮れの太陽は 毎日 違う色をして 沈んでいくのに 私は 毎日 長ネギを刻み わかめの味噌汁を作る すぐそばの国が 戦争を起こした夜も やはり 私はネギを刻んでいた 切り刻みたいのは 自分のいのち かもしれないから 新しい戦争が始まっても 私の心は 凪いでいるのかもしれない そんなことではダメだと 銅鑼を鳴らして 教えてくれる 親切な人もいるけれど 私は 自分の無力を 知っているので スーパーの特売で買ってくる 長ネギを刻む以外 することがない
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