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雨降り
深夜少し前
白いビニール傘をさして
彼は
迎えに来てくれた
駅の改札を出たところで
立ちんぼして待つ私に
軽く手を挙げて
合図をくれた
私は
折りたたみ傘を開いて
彼のそばに寄る
彼の横に立とうとしても
傘が邪魔をする
雨降りの歯がゆさ
どこかでなにか食べよう
彼は先立って
歩き始めた
私は少し後ろを
ついていく
歩きながら
彼が振り返りもせず
左手を差し出した
私と手を繋ぐために
雨の夜なのに
差し出された手に手を重ねて
傘をさしながら
手を繋いで歩いて
目指すのは
トンカツ屋なのに
心は甘い蜜で
満たされていた
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