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「見〜つけた〜」
草むらの影に隠れていた少年の襟を掴むと、黎明は強引に本命ちゃんを引きずり出した。
その体があまりにも傷だらけだったもんだから、つい顔を顰めてしまった。
「あーあーあー、ボーヤ一体何回転んだー?体中切り傷と痣だらけじゃん!茹でても駄目だな、これ。誤魔化しきれねえわ。どーしてくれんの、ボーヤ?」
「ご、ごめん、なさい」
「いいよお」
黎明は寛大な心の持ち主だった。
「…それにしても体中ボロッボロだねえ。必死に逃げ回っちゃった?かぁーいそー。どーせ食べられちゃうのにさあ。…にしてもだよな。この傷の数はねえわ」
どうしようか。メニューを変更しなくては、と黎明は腕を組んだ。その際どちゃっと鈍い音をたてて落ちた本命ちゃんの事は視界にすら入っていなかった。
まァそれくらいで骨は折れやしない。折れたらとんだカルシウム不足だ。折れたほうが悪い。
スライスがいいかな、と指をパチっと鳴らした時にはその本命ちゃんは何か赤黒い物をみつめていた。
「…何そのゴミ。あ、ボーヤの母ちゃんか」
適当に捨てた肉塊は本命ちゃんの近くにも落ちていたらしい。
「…これ、ママ?」
「そーだよー。あんまり美味しくなかったけどね!」
「…ありがとうございます。でした」
「…は?」
下手くそな敬語で少年はぺこりと頭を下げた。
今度は黎明に疑問符が付く番だった。
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