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あ、
しくったなー、とは思った。
やっぱり大人を連れてくるべきじゃなかった。
時間が経てばたつ程どんどん肉の鮮度が落ちてくるのだ。
成熟した大人はあまり好きじゃない。食べても黎明には美味しいと感じなかった。
メイクとかいう調味料のせいで肉の柔らかさが台無しになっているのだ。それでも食べれることは食べれるけど。大人になるにつれ身体が硬くなるし、好んで食べようとは思わない。微妙である。
つまるところ、欲張りすぎた。
目の前で転がってるメイクババアを喰ってる間にどうにかこうにか拘束を解いた本命の肉――子供が何処かに逃げてしまった。
逃げてる間に転んで怪我でもしたらどうするんだ。
食べる前に血でも出たら折角の肉が台無しになってしまう。傷んだところは菌が入りやすいのだから、食べる側の気持ちにもなってほしい。
どうせ匂いで分かるから。逃げても無駄だと言うのに。黎明はメイクババアの残骸を適当な場所に捨てて(綺麗好きな誰かがいつの間にか掃除していくれているだろう)、口元の血を拭ってから立ち上がった。
「怖くないよ〜出ておいで〜」
隠れ鬼ごっこみたいだな、と思った。普通の隠れ鬼ごっこと違うところは鬼が本当の鬼だという事で、見つかったら「見つかっちゃったー」ではすまないという事で。
まァ所詮子供である。びっくりする程遠い場所なんかに行けるはずがない。その子供がメロスとかボルトとかの子供だったら無くは無いが、きっとメロスもボルトもあのメイクババアよりもマシな嫁を貰っている。
よって本命ちゃんは近くにいる。
黎明は余裕綽々にスキップしながら本命ちゃんを探し始めた。
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