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面倒だが、これも上司の役目。昨今の事情も踏まえればしかたない。
仕事中と思われる部下へと電話をつなぐ。
「……はい、もしもし、こちら明けの明星です」
第一声から不安な気持ちになる。
「できれば、ちゃんと本名で出てほしいんだけど」
「今時発信元がわかってるからいいじゃないですか。ちゃんと名前を確認したうえで言っていますから」
発言は適当だが、前の部署では優秀だったと聞いている。
「まぁ、いいや。ところで仕事は順調?」
「何ですか? オンライン会議ですか?」
「いや、そんなにお堅いものじゃなくて、ただ単にどうかなって思って」
「……」
急な上司からの電話だ。
オンライン会議をするならまだしも、こんな下手な質問では「仕事をさぼってないか調べている」と言っているようなもの。
不信感を抱かれても仕方がない。
「そうですねぇ、リモートワーク中ですものね。……仕事の方はぼちぼちで、今は極楽天国です」
いや、どっちだよ。『ぼちぼち』か『天国』かはっきりしてほしい。
「それなりに進んでるってことかな」
変に疑われて部下からの信頼を落とすのも痛いので、良い方向に解釈し電話を終えようとする。
「チャプチャプ」
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