2人が本棚に入れています
本棚に追加
「大地、何してんだよ。」
教室の隅でぼけっと立っていると亮希がやってきて僕の横に並ぶ。
「空は青いな。」
「それはそうだろう。」
空は青いって決まってるんだよ。そう言って笑う亮希が憎い。
「お前さ、大学どこ狙ってんの?」
「K大。」
なんの迷いもなく帰ってきた亮希の答え。
「…まじ?」
「うん。てか何?大地俺のこと追っかけようとか思ってたわけ?」
やめろよなーと笑う亮希の声はいつものおちゃらけた声で、先ほどの真剣な声が余計に信憑性を増す。
「思ってないよ。でも、お前がいなくなったら寂しくなるな。」
そう口にして、それが本心だと思った。
いくら福原が亮希を好きでも、こいつは僕の親友で、いなくなったら寂しい。
「なんだよなー。」
「お前さ、漫画の主人公みたいなやつだよな。」
僕の言葉に亮希が顔をしかめる。
「んで、僕が脇役。頭がよくてスポーツができて、そんなお前がなんのとりえもない僕を置いてくんだよ。」
そして主人公は女の子と結ばれる。
脇役が彼女のことを好きだったなんて知らずに。
福原の中にあるのは、そういうストーリーなんだ。
主役は亮希で、僕はその親友。
脇役でしかない。
「そんなの楽しいわけないだろ。」
何を言ってるんだと亮希がますます眉を潜める。
「悪い。忘れて。」
はぐらかすようにそう言っても亮希は引かない。
そして僕はことごとく誤魔化すのが下手なんだ。
「お前はさ、好きな奴とかいないわけ?」
本当に憎いやつ。
亮希は僕の問いににっこりと微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!