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「やぁ大地くん。どうしたのかなそんな浮かない顔して。」
福原が僕の前に立つ。
その顔を僕は真正面から見れない。
「お疲れ。」
「うん。」
そのまま並んで歩く。
「今日、上村くんと話してましたね。」
ぽつりと福原が呟く。
「K大だってさ。」
「聞いてました。」
福原は前髪で顔を隠すように撫でつけ、小さくそう言った。
僕は福原の顔を見たけれど、表情は全く読み取れなかった。
「聞いてましたよ、全部。」
ぎゅっと鞄を掴む福原の手が震えていることに気付いたのは、そのときだった。
「おい、福原…。」
「いいんです。別に付き合うとかそんなの望んでたわけじゃないんです。私はただ、上村くんの側にいられれば良かった…。」
堪えきれなくなってふらつく福原を、僕は強引に抱き寄せた。
痛々しくて見てられなかった。
側にいられればいいなんて、嘘だ。
僕に悪気なんてなかった。
それなのに、僕は福原を傷つけて、彼女の想いを踏みにじった。
「ごめん、ごめん福原。」
脇役の僕にはただ謝ることしかできない。
泣きじゃくる福原。
しがみついてくる彼女は、亮希のことを考えているのだろうか。
それでもいい。
今日だけは僕の側で…。
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