雲隠

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 あなたの心の奥深くには、わたしのよく知る相貌の、会ったこともないひとの存在がある。  気付いた時、わたしのなかで何かが弾けたのです。  飛んで、消えてしまった。  もうあなたを、愛することはできないと。  わたしを苦しめたたくさんの女性たち一人ひとり、身代わりに過ぎなかったのですね。  滑稽だわ。  愛されているなんて偽り。  わたしも、そのうちのひとりでしか、なかったなんて。  けれどあなたは永遠に、わたしの、ひかるきみ。  出逢ってから最期まで、わたしのすべて。  胸打つ高鳴りも熱い吐息も止む今こそ、あなたはわたしだけのもの。
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