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sied Kaede
レンズの向こうに見慣れた姿を捕えて、思わず頬が緩んだ。視界をレンズからはずして直接彼の姿を確かめる。
「秋月先輩。」
笑顔で名前を呼べば気づいた彼も笑顔で手を降ってきた。
「お久しぶりです。」
駆け寄ってきてくれた彼に声をかける。
「久しぶり。桜並木か。いいの撮れた?」
私の見ていた方向を振り替えって、秋月先輩はそう言った。
「どうですかね。先輩はどうして?」
就活で忙しい先輩が、わざわざ大学のはずれに通りかかるなんて珍しい。
「ちょっと時間があいたからね。後輩たちの様子でも見ようと思って。」
そのまま先輩と一緒に部室までの道のりを歩く。
「最近どう?」
「まだまだですよ。」
そう言って首からさげていたカメラを撫でる。
「楓ちゃんいい写真撮るのに。」
やっぱり自信ないなと、秋月先輩は笑った。私に、写真のことを教えてくれたのは秋月先輩だった。入学してすぐ、まだ何もわかってない私を写真部の部室に招き入れ、新しい世界を教えてくれた。優しくて、すごく綺麗な写真を撮る秋月先輩。先輩にいろいろ教えてもらって、写真を撮るだけで幸せな日々だった。4年生になった先輩とはもうなかなか会えないけど。こうやって時々姿が見れればいい。
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