sied Kaede

1/6
前へ
/8ページ
次へ

sied Kaede

レンズの向こうに見慣れた姿を捕えて、思わず頬が緩んだ。視界をレンズからはずして直接彼の姿を確かめる。 「秋月先輩。」 笑顔で名前を呼べば気づいた彼も笑顔で手を降ってきた。 「お久しぶりです。」 駆け寄ってきてくれた彼に声をかける。 「久しぶり。桜並木か。いいの撮れた?」 私の見ていた方向を振り替えって、秋月先輩はそう言った。 「どうですかね。先輩はどうして?」 就活で忙しい先輩が、わざわざ大学のはずれに通りかかるなんて珍しい。 「ちょっと時間があいたからね。後輩たちの様子でも見ようと思って。」 そのまま先輩と一緒に部室までの道のりを歩く。 「最近どう?」 「まだまだですよ。」 そう言って首からさげていたカメラを撫でる。 「楓ちゃんいい写真撮るのに。」 やっぱり自信ないなと、秋月先輩は笑った。私に、写真のことを教えてくれたのは秋月先輩だった。入学してすぐ、まだ何もわかってない私を写真部の部室に招き入れ、新しい世界を教えてくれた。優しくて、すごく綺麗な写真を撮る秋月先輩。先輩にいろいろ教えてもらって、写真を撮るだけで幸せな日々だった。4年生になった先輩とはもうなかなか会えないけど。こうやって時々姿が見れればいい。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加