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もう一度。
もう一度あの日みたいに雪が積もったら、踏切に行こうと思っていた。
中々雪の降ることのないこの街は、まともな雪のための準備ができていない。どこかの人が申し訳程度に撒いた凍結防止剤のあるところだけがまばらにアスファルトの黒をのぞかせている。
冷えた空気の独特の香りが鼻の奥をツンと刺激して痛い。
踏切へと続く上り坂を、ゆっくりと歩きながら美奈子の事を思い出していた。
美奈子は私の小学生の時からの友人である。
2年前の冬にこの踏切で自殺した。私の目の前で。
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