攻防戦は女湯で巻き起こる

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「それね、禅が買ってきてくれたの。私に電話で聞いたあとに。自分では言わないけどね、多分、色んなお店まわったんだよ。だって、生理用品買ってきたお店の袋と違うお店の袋に入ってたもん。最初のお店に薬剤師さん居なかったんでしょう? あんたが他人のためにそこまでするなんてねぇ。春なのに雪でも降るのかな」  私が「なんですか?」という顔を向けてしまっていたからか、薬を飲もうとしたら、お姉さんがすらすらと良い滑舌で言葉を並べていった。  ――禅さんが私のために? 流川さんを一人で女性物の下着屋さんに向かわせて楽しんでいた禅さんが? 有り得ない。絶対、買いづらかったはずだ。  禅さんはお姉さんが苦手なのか、それとも、何かを言うのが面倒なのか、黙ってしまっている。  私も静かに薬を飲むことしか出来ない。まだお姉さんの話が続きそうだったからだ。 「あと、流川から聞いたよ? この子、お家に閉じ込めてるんだってね。可哀想に。女の子を監禁なんてするもんじゃないよ? 体調が良くなり次第、自由に散歩とか仕事くらいさせてあげな」  腕を組んだ偉そうな姿が、ちょっとだけ禅さんに似ている。でも、よくぞ言ってくれたお姉様! という感じだ。 「禅が仕事あげないならー、うちに来てもらおうかなー、都築ちゃん、可愛いし」  自分の綺麗な髪を手で弄りながら、お姉さんが言う。この人も禅さんと同様にモテそうだ。そのスタイルの良さから、モデルさんでもやっているのだろうか? と思ってしまう。 「こいつはお前にはやらない。俺がこいつに合った仕事を与える。帰れ」  やっと口を開いたと思ったら、私に良くしてくれたお姉さんに対して追い返すようなことを言う。 「まったく、いっつもそう。お礼くらい言いなさいよね」  お姉さんがそう言っても、禅さんが彼女にお礼を言うことはなかった。 「じゃあ、またね、都築ちゃん。これで六道家は安泰かなー」  普通に去って行くと思っていたのに、その最後のは何ですか?
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