攻防戦は女湯で巻き起こる

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 ◆ ◆ ◆  ほぼ一週間後、お部屋でのんびりしていた私は元の体調に戻ることが出来た。禅さんも流川さんも心配しつつ、適度に放っておいてくれて気持ち的にもとても楽だった。  禅さんの手から解放されたい私と、今の生活の快適さに負けそうな私が居る。元はといえば、禅さんを間違って誘拐してしまった私が悪いわけで……、なんて思ってしまうのは、今、私の目の前にあのときの車があるからだろうか? 「あの、本当に私が運転して良いんですか?」  駐車場に停められていた黒い高級車の前に立ち、自分の後ろに立っている禅さんに尋ねる。 「お前の仕事だ」  禅さんはそれしか言わない。この数分前も「車を運転しろ」しか言わなかった。 「えっと、会社までの送り迎えをすれば良いんですよね?」  そう言いながらも「当たり前だろう? 何を馬鹿なことを」とか怖い顔で言われそうで禅さんの顔が見られない。私の視線はピカピカの高級車に向かっている。 「……」  ――あれ? 返事が無い。 「禅さん?」
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