攻防戦は女湯で巻き起こる

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 ◆ ◆ ◆  溺れた意識が薄らと戻ってきたとき、私の目の前は暗かった。真っ暗というわけではなく、隙間から光が見えると言った方が正しい。  つまり、私は目隠しをされて、どこかの畳の上に転がされている。後ろ手で縛られているけれど、頬に感じた畳の感触で理解した。あとは匂いだ。和室の匂いがする。  どうして、こんなにも冷静に状況を把握出来ているのか、私が一番不思議に思っている。少し、諦めているというところがある気もする。また死に直面したら心が乱れるのかもしれないけれど。 「目覚めたか?」  なんだか渋い声が聞こえる。起きたけれど、寝たフリをしても良いだろうか? 顔や身体を蹴られたりするだろうか? それは嫌だな。 「おい、起こしてやれ」  渋い声が誰かに指示を出した。畳を踏む音が近付いてくる。この部屋には一体、何人居るのだろうか? 物音があまりしない。 「……っ」  急に見えない両手に身体を起こされ、ビクっと身体が跳ねた。 「駒田都築、お前の目的は何だ?」 「……」  脈絡の無い質問に私は答えられなかった。私は何を聞かれているのだろうか? 攫ったのはそっちなのに、何故か、この言い方だと私が悪いことをしたみたいじゃない。  栄さんに誘拐されて、彼は禅さんの敵で、騙してて、何かを企んでる。ということは、私に話し掛けてる、この渋い声の持ち主も禅さんの敵で、この人が聞き出したいのは私じゃなくて、禅さんの秘密?  ――でも、お前の目的って言ってなかったっけ? 「もう一度聞く。お前の目的は何だ?」  ――言ってる。もう一度言ってる。 「……何の話ですか?」  本当に分からなくて、聞き返した。 私は夢でも見ているのだろうか? 何か尋問をされている夢を。 「質問を変える。お前は金に興味があるか?」  ――ん? なんか、質問の方向性おかしくなってない?
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