攻防戦は女湯で巻き起こる

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「ありません」  何かがおかしいけれど、取り敢えず、正直なことを言っておいた。特に自分はお金に執着しているわけではないと思う。まあ、今のところは。  それにしても相変わらず、何も見えないし、私を起こしてくれた人は誰なんだろうと思う。 「信じられんな」  目の前がクリアで危険なことが無いと分かっていたら、「じゃあ、聞かないでください」と言ってやりたいところだ。最初から信じないなら、どうして尋ねるのか。 「あの、私、何か悪いことしましたか?」 「お前は六道禅に近付いた」  ――六道?  渋い声は禅さんの苗字を六道と言っている。ということは、禅さんの正体を知っているということだ。 「何が目的だ?」 「だから、何もありませんよ。ちょっと乗る車を間違ってしまっただけで」 「なら、何故一緒に居る? 六道禅に興味があるのか?」 「いえ、興味は一切ありません」  そこはハッキリと言わせていただきます。あれ? でも、やっぱりおかしい。これ……、この人、禅さん側の人だ。  しかも、私と禅さんの関係を気にしている。ということは 「もしかして……禅さんのお父様ですか?」  身内な予感がする。
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