攻防戦は女湯で巻き起こる

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「目を逸らすな」 「っ……」  叱られて、チラチラと禅さんの顔を見たり、彼の上半身を見たりを繰り返す。そろりと動かす手で肌の感触や体温を感じる。胸も腕も筋肉が硬くて、気が付けば、すっかり油断して、これが男性の身体なのか、と感心していた。まだ下半身は見ることが出来ないけれど。 「禅さん、手、大きいですよね」  無意識にそんなことを呟きながら、大きな手をむにむにと指で押したりしていた。そんなときだ。 「わわっ!」  何を思ったのか、禅さんが私を横抱きにして、湯船に浸かった。冷えると思ったのかもしれない。そう思った私が馬鹿だった。 「ちょ! 禅さん!」  まるでマジシャンが人を消したときみたいに、禅さんが私のバスタオルを剥ぎ取った。しかも、私が取りに行けないように遠くに投げてしまって、両手で隠そうにも隠したい場所が多過ぎて、もたもたしている間に後ろから抱き締められていた。 「直に見ても貧乳だな」 「見ないでください!」  俺様が降臨なさった。さっきまでの禅さんはどこに消えてしまったのか。私の小さな胸を見て、禅さんは意地悪な笑みを浮かべている。 「んんっ」  禅さんは片手で私の顎を横向きに固定してキスをし、片手で私の胸を揉んでくる。お湯の熱さの所為なのか、頭が少しだけフワフワしてきた。 「今度は泣くなよ?」  キスが終われば、今度は私の耳を甘噛みして、艶のある掠れた声が囁く。
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