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「なんだと?」
今が夜だなんて分からないほどに明るい寝室で、禅さんが私に冷たい瞳を向けた。今にも寝ようとしていたときだった。
「……お金を800万ほど貸していただきたいんです」
とても言い辛くて、二回目でも、もそもそと言ってしまう。でも、禅さんは今度こそ私の言葉を聞き取って、とても怖い顔をした。
「出て行け」
「理由があるんです!」
最初から説明をすれば良かった、と思ったけれど、今さらで、禅さんの怒りは収まらない。
「出て行け! お前も他の奴らと同じだったんだな!」
「禅さ……っ、――……分かりました……」
話なんて通用しない。悪いのは私だ。
「お世話になりました」
何も持つ物は無く、私は静かに禅さんとお別れをした。
どうしてこんなことになってしまったのか、それは数時間前に遡る……。
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