あなたにさよならと言わせてください

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「嫉妬か」 「はぁ?」  この人は一体、何を言うのだろうか? と振り向くと、いつの間にか、凄く近くに禅さんが近付いていた。 「安心しろ。俺の金と容姿にしか興味が無い奴らだ。出来ることなら全員クビにしてやりたいが、人材が必要でな」  禅さんは彼女たちのような人間を酷く嫌っているのだと、表情と声音で分かった。 「別に嫉妬も心配もしてませんよ」  ふん、と余裕の表情で返す。私は本当のことを言ったまでだ。 「そうか、それなら……心置きなくお前を襲えるな」  珍しく、禅さんがにこっと笑って、私の腰を抱いてきた。  ――はいぃぃい? どうして、その思考になるんですか!? ずるい! その顔はずるい! 偽物だ、その笑顔は偽物だ! 「ぜ、ぜぜ、禅さん、無理にはしないって、男に二言はないって……」 「男に二言? はっ、誰のセリフだ?」  ――はあああああ! 確かに、男に二言はない、は私が勝手に思っていただけだったぁぁああ!  禅さんに鼻で笑われて、パニックになる。そして、今さら恥ずかしい気持ちを思い出してしまった。きっと、今の私は顔が真っ赤だろう。だって、顔がとても熱い! 「さて、お前の望みは“オフィスラブ”だったか」 「え、ちょっ! 誰もそんなこと言ってません!」  急に横抱きにされて、社長椅子のところまで連れて行かれる。まさか、オフィスが初めて、と言ってはしゃいでいた私を見て勘違いをしたとでも?
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