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「私はお客様にコーヒーを煎れてくるから、ここで大人しくしてろよ?」
一つ下の階にある休憩室に私を置いて、流川さんはそそくさと消えてしまった。
他の人間はもちろん就業中なのだろう。休憩室には私しか居ない。
一体、何をしてこの天空の城を楽しめば良いのか、と外に向けられたカウンターに座って大きな窓から眼下を眺めた。
それから、やっぱりやることが無くて暇で仕方がなく、スマホで色々と外の世界を知ろうと考えた。
思えば、最初から禅さんは私のスマホを取り上げなかった。本当に自分が私のことを飼ってやっていると思っていたからだろうか? それとも、取引を台無しにした私の弱味を握っていると思ったから?
どちらにしても、私も警察や外に連絡をすることはしなかった。何故なら、乱暴をするとか禅さんが警察に捕まるような決定的なことをしなかったからだ。正直に言うと、ちょっとした彼の優しさに甘えていたというのもあると思う。
「笑顔の素敵な若社長、社員のために会社にカフェを設置……へぇ、はっ」
――なんで私、また禅さんの記事見てるの!? 閉じて、閉じて!
慌ててプラウザのバックボタンを連打して、画面が下になるようにスマホをテーブルに置いた。
禅さんを信用させて、自由になるという自分の計画は一体どこに行ってしまったのか。駄目駄目、流されては駄目。私は絶対、彼から離れて自由になるのだ。
そう決心をした瞬間だった。
「ん?」
まるで私が暇であることを知っているかのように、ここ最近めっきり鳴ることのなかったスマホが激しく震え出した。
「あ! 忘れてた!」
スマホを手に取って、画面を確認し、私は思わず声を上げてしまった。
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