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最初は激しく点滅していた蛍光灯がチカ……チカ……と間延びしたように点滅を始める。少しずつ闇が長くなって……
気が付いたら、一人増えていて、その人物は般若の面を被っていた。
「おい、お前! ぐあ!」
明暗が切り替わる中、男が一人襲われた。般若に銃を奪われ、その自らの銃で撃たれたのだ。
暗くなると移動して、明るくなると今まで立っていた場所から別の場所に立っている。そんな動きを追えるはずがなく、男たちは次々と般若に銃で撃たれていき、最後の一人になった。
私を襲おうとしていた金髪の若い男だ。
「ッ! 何すんだ……!」
男が叫んだ。般若が足蹴にして、コンクリートの上に転がった男からスーツのジャケットを乱暴に剥ぎ取ったのだ。
「やめっ! ッ……」
パンッ
般若は力尽くで男に今まで使っていた銃を握らせ、自分から頭を撃ち抜くように男の指の上から引き金を引いた。
「地獄に墜ちろ」
ドサリと倒れる男の身体。それを見下ろす、般若の面を被った男。その声は紛れもなく禅さんだった。
仮面を外すことなく、静かに私に近付いてくる。
「今からここに警察が突入してくる。安心しろ。その中に俺の知り合いが一人居る。そいつが上手くお前のことをカバーしてくれるだろう。お前は気を失っていてよく分からなかったと言っておけ」
そう言いながら男から奪ったジャケットを私に掛け、禅さんは廃墟から出て行こうとした。しかし
「禅さ……」
私が掠れた声で名前を呼ぶと、ピタリと足を止めて、こちらに戻ってきた。黒い革手袋を嵌めた大きな手が私の方に伸びてきて、ビクッと身体が小さく跳ねる。それを見て、禅さんは手を引っ込めた。
「あとで必ず、迎えに行く」
私に触れることなく、禅さんはそれだけを告げて、廃墟から消えた。
「……っ」
いつの間にか止まっていた涙が、禅さんの言葉を理解して、また溢れ出す。
――どうして、助けに来てくれたんですか? どうして……?
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