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病院で色々と検査をされて、女性の警察官と少し話をして、私が自由になったときには空が明るくなっていた。無理にすぐに話をする必要は無いと女性の警察官は言っていたけれど、私は早く解放されたくて、病室で話をした。気を失っていて、ほとんど何も分からなかった、と。
そのあと、高見さんが病室まで迎えに来てくれて、車でどこかの大きな立体駐車場まで送ってくれた。頭がまだ普通で居られなくて、場所の認識もままならない。
車から降りて、高見さんについて行くと、そこには禅さんと流川さんが居た。どんどん距離を詰めて、高見さんと禅さんが向き合う。
「禅、今度こそ蓮葉組はお前を炙り出しに来てるね」
口を開いたのは高見さんだった。
「……」
禅さんはジッと高見さんの目を見て何も言わない。
「まだ震えてる。早く連れて帰ってあげた方が良い」
私をチラッと見て、高見さんが言った。禅さんが何も言わなかったからだろう。それから、やっと禅さんが口を開いた。
「流川、あいつを先に車に連れて行ってやれ」
「はい」
禅さんから指示を受け、流川さんが私の方に来て、「こっちだ」と言った。まだ禅さんと高見さんは話をするようで、私は黙って流川さんについて行った。
「……流川さん、これ」
後部座席に乗り込む前に、傍らに居た流川さんに彼のクレジットカードを返そうとした。
「良いんだ、そんなものはあとで」
複雑そうな顔をして、流川さんが首を横に振った。それを見て、私は素直に手を引っ込めて、後部座席に座った。
「よく無事だったな……、怖かっただろう?」
流川さんは白いふわふわな毛布を用意してくれていて、私の膝に掛けてくれた。それが、まるで妹子みたいで、心がぎゅっとなる。
「流川さんが気が付いてくれたんですよね?」
私が、山奥のコンビニで自分が飲むはずのないコーヒーを、あなたのカードで購入したことを。
「違う。全部、若だ。若がお前を見つけたんだよ」
私と視線が合うように、扉のところでしゃがんで、流川さんがこちらを見上げる。
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