それは突然に訪れるものです

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 ◆ ◆ ◆  しんと静まり返ったコンクリートの空間を歩く。周りに人の気配はない。私の足音だけが反響して、少し不安になってくる。  あのあと「考えが無いわけじゃない」と言った禅さんは、誰かに電話を掛けながら暫くベランダに消えた。それから、リビングに戻ってきて、彼は私に「デートだ。午前十時になったら地下駐車場に来い」とだけ言った。  それを私の横で聞いていた梓さんは「都築ちゃん、やったね! デートだって! おめかししなくちゃ!」と目を輝かせた。そして、そのまま私に元から着せようと思っていたという服を鞄から選び出し、メイクを施して、髪を整えた。少し伸びた髪を上手くフワフワに巻いてくれて、ちょっと猫みたいだな、と思った。  禅さんはいつの間にか、先に出てしまったみたいで部屋から消えていた。準備でもあったのだろうか?  そうこうしているうちに午前十時になって、「いってらっしゃい、楽しんでね」と梓さんに送り出され、私は今、マンションの地下駐車場を履き慣れない少しヒールの高い水色のパンプスで歩いているところなのである。  薄い水色のレースシャツに青系統の花柄のスカートは春らしくて良いけれど、今までに着たことのないオシャレな格好にどうしても戸惑ってしまう。何度も立ち止まって、シャツがスカートから出ていないだろうか? 裾は捲れていないだろうか? と確認してしまう。  ――今のところは大丈夫みたい。  ホッとして歩き出したところで、誰かが柱のところから曲がって、私の前に出てきた。 「あ、すみません」  そう言って、横に避けようとしたら、その人は私と同じように横にズレて道を遮ってきた。 「え?」  ビックリして、顔を見るとそこには……
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