幸の薄さを胸で判断しないでください

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「何を言って……」 「仕事も家も失くしたお前を俺が飼ってやると言っているんだ。ありがたく思え」 「いや、家は失ってないですけど」  なんなのだろうか、この俺様は。銃はもう持っていないみたいだから、私も強気に出てみた。果たして、両腕をベッドに押し付けられていて、動けなくて、これが強気な姿勢と言えるのかは不明だけれど。 「そうか。だが、俺はお前を飼う」 「勝手に決めないでください。私はあなたのことをあまり知らないですし、たとえ銃を持っていても、あなたが裏で何をやっているのか知りません」  知らなければ、まだ私には戻れる可能性がある。何も無かったと思って、元の世界に戻れる可能性が。ここは異世界だ。あなたは異世界の人間なのだ。だから、自分から関わっておいてなんだけれど、これ以上、私に関わらないでほしい。  お金持ちで、容姿も完璧で、性格には難がありそうだけど、私に関わる意味が分からない。お金持ちのお遊びに付き合う気もない。 「なら、知ればいい。俺は」 「言わないでください」 「俺は」 「だから、言わな……んっ」  ずっと距離が近いと思っていたけれど、急にさらにグッと近付いて、彼に触れるだけのキスをされた。微かにタバコの匂いがする。
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